2016年5月17日火曜日

帰ってきた"Nose To Tail"! 日本人の知らなかった和牛へのアプローチ

始まりましたよ。ニューヨーク グリルの年に一度の牛祭りが! 昨日、16日から新宿「パーク ハイアット 東京」の「ニューヨーク グリル」で「牛一頭まるごとおいしく食べ尽くす」というコンセプトのフェア「ノーズ トゥ テール」が始まったわけですが、相変わらずアルゼンチン出身のフェデリコ・ハインツマン総料理長の肉料理の発想がキレッキレでございました。

去年の第一弾のテーマは"フレッシュ&シーズナル"。いわば「鮮と旬」。日本料理の根幹となるテーマで和牛をお取り扱い。第二弾となる、今年のテーマは「スモーク&キュア」。意訳すると「燻製とマリネ」といったところ。今年の「ノーズ トゥ テール」の品書きは以下のとおり。ちなみにそれぞれワインとのペアリングも楽しめるセットとなっておりました。

1.牛タンのサラダとグリーンピース
赤玉葱と胡瓜のピクルス ひよこ豆

2.牛ハツのパストラミ 黄身の味噌マリネ
ピーナッツソースとスモークバター

3.黒毛和牛のブリスケットBBQソース
人参キノアのリゾット サンモールチーズ

4.バーボンでマリネした黒毛和牛フランクステーキ スイートガーリック
パタゴニアソルトとスモークしたセロリアックピューレ トリュフソース

5."パンケケ"キャラメルクリーム
ビターチョコレートアイスクリームとカカオクランブル


まずは前菜。「牛タンのサラダとグリーンピース 赤玉葱と胡瓜のピクルス ひよこ豆」
















「ニューヨークグリルだから、NYテイストを盛り込みたい」とフェデリコが望んで盛り込まれた前菜。70℃台前半の火入れは難しい。たいていの肉好きは浅い火入れを好むけど、肉を食べこんだマニアたちは浅いだけの火入れよりも焼きこんだ味を好んだりもする。この牛タンは煮込みのようなやわらかさはないが、火は通っている。黒毛和牛のタンの新しい側面を見ることができる。牛タンなのに食べるとお腹がすくとはこれいかに。合わせるワインはメルヴィル エステート シャルドネ サンタ・リタ・ヒルズ。


牛ハツのパストラミ 黄身の味噌マリネ ピーナッツソースとスモークバター
















「アルゼンチンではハツのグリルにピーナッツソースを合わせるのは定番」とフェデリコは言うものの日本人にとっては目新しい組み合わせ。脂肪の少ない牛ハツにナッツの濃醇なコクは確かに合う(これは使える……)。パストラミは24時間、塩、砂糖、酢などでマリネしたあと、65℃のオーブンで3.5時間加熱したものを冷却。「黄身の味噌がけ」は味噌、酒、みりんといった和の調味料+オリーブオイル。皿の上の時点でマリアージュ。メルヴィル エステート ピノ・ノワール サンタ・リタ・ヒルズの少し粗野な味が獣肉×ナッツと好相性。


黒毛和牛のブリスケットBBQソース 人参キノアのリゾット サンモールチーズ
















ブリスケットは、海外ではBBQなどでよく使われる部位。日本では「肩バラ」と言われるが、比較的硬いのでレシピや用途に工夫が必要。以前、dressingの連載で湘南のBBQハウスで供される10時間焼きを紹介したが、NYグリルでも塩、砂糖で72時間マリネ→4~6時間スモーク→65℃のオーブンで加熱(時間聞きそびれた)と手間と時間をかけた超希少な一皿に。そもそも日本ではブリスケットを長時間かけて調理すること自体が珍しい上に、和牛にこの手法を使った皿は本当に珍しい。NYグリルとはいえ、さすがにレギュラーで出すには手が掛かりそう。噛みこむと肉の繊維がじわじわとほどけ、奥から確かに和牛の底深いうま味がしみ出してくる。永遠に噛んでいたいと思い始める頃、肉の繊維が消滅するたいへん意地悪な設計。ぐぬぬ。フェアならではの一皿。


バーボンでマリネした黒毛和牛フランクステーキ スイートガーリック
パタゴニアソルトとスモークしたセロリアックピューレ トリュフソース


















「フランク」はアメリカではよくステーキに使われる部位。日本では「ササミ」「ササニク」と呼ばれ、焼肉店で薄切りの「カルビ」として見かけることのほうが多い。でも適度な噛みごたえと多少の脂もあるから、とてもステーキに向いていると思う。日本ではサーロインばかりが珍重される傾向があるけど、こういう部位にも付加価値がつくといいなあ。ブラウンシュガー、塩、バーボンで24時間マリネしたものをステーキに。世界一古い(300万年前の層だそうな)パタゴニアソルトのほか、熟成ニンニクのスイートガーリックピュレなどで。




フェデリコの焼きは、いつも本当にお見事。日本では肉の内部をレアに仕上げることが多いが、このくらい追い込んだ火入れのほうが味のノリが一段深くなる。

【その他フェデリコメモ】
・今年2月に3週間アルゼンチンに帰国したら6kg太って東京に戻ってきたらしい。

・「アルゼンチン人は、年間50kg以上牛肉食うんだぜ」「人口よりも牛のほうが多いんだぜ」というアルゼンチン牛自慢は健在。

・あ、あと、たまごサンドが大好きで先日、某専門誌のサンドイッチ特集にお声がかからなかったことにたいへんしょんぼりされていたそうなので、今度何かあったらぜひお声がけを。どうやらコンビニのたまごサンドにまで精通しているという噂。






そして最後のデザートは
"パンケケ"キャラメルクリーム ビターチョコレートアイスクリームとカカオクランブル
















パンケケは南米のクレープ(みたいなもの)。砂糖がけしたあとキャラメリゼさせた香ばしさと、80%カカオのビターチョコレートアイスクリームのほろ苦さと、カカオクランブルの食感が楽しい。きちんとしたデザート×エスプレッソの〆は、やっぱり食事がグッと締まるよなあ。ごちそうさまでした。

あれ? そういえば、ワインはもう一種類あったような気がするけど、ついつい楽しく呑んでしまったので、詳細は現地にてご確認を。そしてたいへん重要なお話ですが、「ノーズ トゥ テール」は昨日16日(月)に始まりましたが、23日(月)までの1週間限定のフェアでありますので、大至急パーク ハイアット 東京のニューヨーク グリルまでお問い合わせを。ディナーコース20,000円で以下の夜景もついてきます(もちろん、食事のあとは同フロアのバーへの移動も可能)。詳細はこちら(http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000012816.html)でどうぞ。

2016年4月2日土曜日

マンガ大賞の楽しみ方&2016一次選考推薦コメント

本年もマンガ大賞2016が発表されました。大賞は野田サトルさんの『ゴールデンカムイ』。マンガ好きの書き手として何かしら賞のお役に立たねば、ということで、サボり倒しているエキサイトレビューさんに授賞式レポート含めた作品レビューを書くのが通例となって参りました。

さて、個人的にはマンガ大賞の醍醐味は一次選考にあり、と思っている次第であります。一次は選考員が好き放題に票を投じるので、その選考員の嗜好がわかりやすい。つまり、ベンチマークにすべき選考員が見つけやすいというステージでもあります。というわけで、「好きなマンガが上位に来なかったな……」という人向け(というわけでもないですが)に、こちらに本年の全選考員のコメントがUPされております。

本年の1次、2次全選考員コメント
http://www.mangataisho.com/data/2016/comment2016.pdf


ここで他の選考員のコメントを読むのと、一次選考後、未読のノミネート作品を読むのがもう楽しみで!

ここから趣味の合う選考員を探す

その人が一次選考で推している作品をチェックする

二次選考でどの作品に投票したかをチェックする

というような形でも新しい作品に出会えたりするのも楽しいところ。一応、以下に僕の一次選考時の推薦コメント貼りつけておきます。

ちなみに僕が二次選考て票を投じたのは以下の三作品。

一位 僕だけがいない街
二位 BLUE GIANT
三位 ゴールデンカムイ


そして一次選考で票を投じたのは以下5作品になります。一応、Amazonリンクも貼っておきますが、マンガは(リアル財布事情なども鑑みつつ)書店であれこれ迷いながら手に取るのがやっぱり楽しいと思うわけです。いや本当、昭和ですみません。


[ 作品タイトル1 ] 僕だけがいない街
[ 作者名1 ] 三部けい
[ コメント1 ] 3年連続で票を投じさせていただく。間違いなく日本マンガ史上に残るであろうサスペンスマンガ(万一今後の展開やエンディングがそうならなかったら、作品のファンは悲しみにくれると思う)。ストーリーとしては前半の山場を超えて、いよいよここから大きく展開するであろうところ。読み手にとっての気は熟した。張り巡らされた伏線はどのように回収されていくのか。 5巻までのじりじりするような構成は読み手にとっては楽しみでもあったが、次巻を待つのがつらい展開でもあった。物語が一気に展開したいまなら、一気読みから次巻以降への思いを巡らせることができるはず。恐らくは残り巻数もそう多くはない。リアルタイムで歴史の証人になるのはいま!
※すでに連載は終了。最終巻の8巻も4月26日の発売が決定していますが、一次選考
投票時は、連載終了含め、未発表でした。二次でも一位に投票。



[ 作品タイトル2 ] BLUE GIANT
[ 作者名2 ] 石塚真一
[ コメント2 ] 第一回マンガ大賞を『岳』で受賞している石塚真一の新境地。世にジャズをモチーフにしたマンガは少ない。日本のジャズマーケットとのサイズとも無縁ではないだろうし、「舞台がジャズでなければならない強固な理由」が見えづらいというような理由もあるかもしれない。だがこのマンガはジャズでなければならない。生々しい音圧にメンバー間の熱いやりとり。回を追うごとに物語を担うバンドメンバー3人のそれぞれの人間くささが、共感できるような温度でよりくっきりと描かれるようになった。いよいよ物語が大きく動き出しそうないま、まさに読み頃です。
※これも二次でも投票。骨太なスケール感。以前、チラ読みしてしっくり来なかったという方には、ぜひ通し読みをおすすめします。音楽経験者にはジャンル問わず、特におすすめ。

[ 作品タイトル3 ] 東京タラレバ娘
[ 作者名3 ] 東村アキコ
[ コメント3 ] 昨年の大賞受賞者を推すのは気が引けなくもない。でも面白いのだから仕方がない。描かれているのは、仕事をしながら東京で暮らすアラサーシングル女性3人組のちょっとアレな恋愛模様。不倫&セカンドに走る女性はいつの時代もいる。でも、いま世の中に受け入れられている(ように見える)のは、切り上げ時を見失う男女が増えたからか、単純に可視化されるようになったからか、はたまたそういう交際のあり方が肯定されるようになったからか。「働く女性のマンガ」として『働きマン』(安野モヨコ)のB面的な捉え方をするなら、いまを生きる日本人はまだ「身の丈サイズの幸せ人生の型」を見つけられていないのかも。男性も深く潜って読むといいと思える作品。『ヒモザイル』復活も祈念。
※授賞式で著者が「最近では、周囲から「ホラーマンガと言われる」と笑いを取っていたが、『かくかくしかじか』でも炸裂していた、切なげな心理描写はもう匠の域。個人的には大好きだけど、誰におすすめすべきかちょっと迷ったので二次では『ゴールデンカムイ』と入れ替えに。

[ 作品タイトル4 ] あれよ星屑
[ 作者名4 ] 山田参助
[ コメント4 ] 戦後の混乱期を描いた「焼け跡ブロマンス」だそうだが、このオビには語弊があると思う。Wikipediaによると「ブロマンス」とは「broもしくはbrother(兄弟)とromance(ロマンス)のかばん語」で「一般的なホモソーシャル行為と歴史的な恋愛的友情の2つに区別される」……ってそういう作品だろうか……。画風はさておき、描かれているのはさまざまな業を背負いながらもたくましく生きていく人間の姿。 言うなれば「焼け跡人間賛歌」。時代や立場によって感情や正義はうつろう。頼りないいまにどう立ち向かい、どう生きるべきか。このマンガは現代に暮らす読み手自身の生き様を問うている。
※当然、二次に進むだろうと思っていたので、ノミネートに至らなかったのが超意外な作品。確かに戦後の混乱期の様子や画風など苦手な人はいるだろうけど、ぬくぬくとした現代に暮らすわれわれこそ読むべき作品だと思うんすよね。いや本当、僕らは恵まれてます。

[ 作品タイトル5 ] 天国ニョーボ
[ 作者名5 ] 須賀原洋行
[ コメント5 ] 『気分は形而上』で作者の奥様をモデルとした「よしえサン」のファンになってから四半世紀。前作の「実在ゲキウマ地酒日記」の最終回で夫唱婦随の奥様が亡くなったことを知り、ひとりのファン(作者に対しても「よしえサン」に対しても)としてショックを受けた。心のなかでお悔やみを申し上げながら、いつかまたペンを手にとってくださることを祈っていた。そこに、発明的とも言えるほどとんでもないたてつけの作品でのカムバック。この1巻には票を入れざるを得ません。
※一次選考で投票したなかで、個人的な思い入れ全開で票を投じた唯一の作品。旧作を読んでない人にはどう響くかわからないけど、描き手の側もマンガに救われることがあるということを、教えられました。第一話を連載で呼んだときには、ボロボロ泣いたなあ。

2016年3月15日火曜日

土井家の黒豆

編集者やライターといった仕事をしていると、担当した連載しだいで、その後関わる仕事が大きく変わることは結構ある。まったく興味のなかった分野でもその面白さに目覚めて、舵を切ることもあるだろうし、もともと興味のある分野ならばなおさら転機になりやすい。

今月売りの『dancyu』2016年4月号のレシピ特集「いいレシピってなんだ?」で、数年ぶりに土井善晴先生にお会いした。


http://www.amazon.co.jp/dp/B01BCF916K/

以前、テレビ朝日『おかずのクッキング』の番組本で、数年間、土井先生の対談連載の構成をしていたことがある。2007~2012年のことだ。ほぼすべての対談現場に立ち会い、全原稿に関わった。

対談のお相手は、すごい方々ばかりだった。斉須政雄さん(コート・ドール)、森義文さん(カハラ)、岸田周三さん(カンテサンス)といった料理界の巨人に、辻村史朗さん(陶芸家)、石川九楊さん(書家)、坂茂さん(建築家)、といった、創造性の高い現場で体を張る達人たち。

そのほか、山極寿一さん(京都大学)、金田一秀穂さん(言語学者)、熊倉功夫さん(国立民族学博物館)といった研究職の方々に、水木しげるさん・武良布枝さん夫妻、森英恵さん、榊原郁恵さん、小山薫堂さん、有森裕子さん、山本聖子さん、桂三枝(現・文枝)さんなど数え上げたらキリがない。

お相手はすべて土井先生ご本人の指名。現場で繰り広げられる会話から、とてもたくさんのことを勉強させていただいた。この連載で見聞きしたことが、ある面では自分の考え方の土台になってもいる。ここ数年で食べ物関連の仕事にずいぶんと軸足を置くようになったが、そのきっかけのひとつは、間違いなくこの対談連載だった。

何度かあった京都での取材後には、必ず土井先生お気に入りの丼もの屋で食事をした。何度目かのとき、「ごはん軽めで」と注文しようとしたら「いいバランスになるよう作ってはるんやから」とたしなめられたし、震災後には、"着丼"を待ちながらあるべき仕事のスタンスについて話を聞いていただいたこともあった。

そんな土井先生が今回の特集にあたり、選んだレシピが父・土井勝さんから受け継いだ"黒豆"だった。原稿の導入で「ある特定のメニューでたったひとつのレシピがこれほどまでに支持され、伝播した例はないだろう」と書いた。これはまったくオーバーな話ではない。名だたるシェフから料理家までこのレシピの黒豆で正月を迎えた家庭は多かったと聞く。決して料理上手ではなかったうちの母親も、黒豆といえばこのレシピだった。黒豆界(というものが存在するかはさておき)に革命を起こしたレシピであり、錚々たる方々が登場する今回の特集の締めに選ばれたのには、このレシピの奥深さがあるんだと思う。


僕は政治家や医者、漫画家といった職業の方を「先生」と呼ぶのがわりと苦手だ。すべての人は取材の対象になり得るし、目線を下げ過ぎると見えなくなるものがある。心のこもっていない、記号としての「先生」使いが好きじゃない。でも土井先生については、いつからか自然と「土井センセ」と呼ぶようになっていた。それだけたくさんのことを(勝手に)学ばせていただいたんだと思う。

撮影後、初めて本家本元、土井家の黒豆をいただいた。レシピは同じでも実家の黒豆より味が澄んでいる。言うまでもなく、とてもおいしい。じっくり味わうと違いは明らか。それでもどこか似ていて懐かしい。取材後、自分でも黒豆を炊いてみた。案の定、何かが違う。でもでもやっぱり懐かしい。

いいレシピってこういうことか。

2015年9月16日水曜日

「「早死に」の原因は食生活だった(研究結果)」のばか

なんだろう。この冗談みたいなハフポストの記事は。ツッコミどころがありすぎて、ツッコミたくなくなりますし、こんなことやってる場合じゃないんですが、いかにピックアップするポイントがひどいかだけ、備忘録がてら。

「早死に」の原因は食生活だった(研究結果)
http://www.huffingtonpost.jp/2015/09/14/poor-diet-cause-of-early-death-_n_8137502.html?ncid=fcbklnkjphpmg00000001

2013年には世界中で3,100万人が死亡しており、1990年の2,500万人から大幅に増えている。
こんな指標をドーンと出してくる斜め上のセンスがすごい。1990年当時の人口は52億7000万人、2013年で70億人。試しにこの単純計算土俵に乗っかって総人口に対する死亡率を単純比較してみると1990年は4.8%で、2013年は4.4%。わざわざ指摘するまでもなく、単純死亡率では有意に下がってるじゃないですか。

だいたい世界的にも、大局的には平均余命が右肩上がりな21世紀のいま(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life10/03.html
 )、「早死に」という個人の意識に引っ掛けた見出しが気持ち悪い。

あとね。この博士がかわいそう。

研究を主導した、保険指標評価研究所のクリストファー・マレー博士は、「喫煙や不健康な食生活をやめ、大気汚染などの環境リスクへの対策を強化すれば、健康を改善できる可能性は高い」と述べた。

クリストファー・マレー博士もこんな煽り記事のなかで、さも新しいことを語ってるようなしつらえで書かれると迷惑がるんじゃないでしょうか。「述べた」じゃねえよ。と口の悪い人なら罵詈雑言を浴びせるところですよ。比べてみると同じ研究内容でも以前の発表に対する東京大学のリリース(※PDF http://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/admin/release_20121214.pdf )は劇的にまとも。
発表内容: 医療の進歩や開発の進展によって、世界の人口の大半は早死しなくなったものの、皮肉なこと に病気を抱えながら長生きするようになったことが、世界の疾病負担研究(GBD 2010)により 分かった。

予測はできていた当たり前のことだけれども、きちんと調査したら改めて実証されたという研究を「劇的な新発見!」みたいな調子で書かれた記事をい海外から持ってくる。Webのオチの失格例としてよく持ち出される「どうだろうか」という言葉を使わざるを得ないわけです。

だいたい元記事のハフポストUK版の記事(http://www.huffingtonpost.co.uk/2015/09/14/poor-diet-largest-cause-of-early-death-worldwide_n_8132344.html なんて英国本国ではそのままゴミ箱行きレベルで読まれてないのになんでわざわざ日本に持ってきてゴミを撒き散らかすんでしょうか真に受けるほうも真に受けるほうだしこんなところでブログに書いてる自分もどうかと思うんですが


でもこういう記事ばかり引っ張ってきてると、メディアとして信頼されなくなって読まれなくなりそうなリスクが危なくて怖いです。という、自戒を込めながら、書き手のNatasha HindeさんというLifestyle writerさんの記事をざざっと見てみました。
http://www.huffingtonpost.jp/natasha-hinde/

日本で言うと(面識はないけど)あの人とかあの人みたいなライターさんかな。ああ、本当にどうでもいいものに時間を費やしてしまった。あわてて見積もりと企画書と原稿にとりかかりながら、明日行われる夢のような肉会に備えます。

2015年9月13日日曜日

お詫び

今年一番立て込んでた今週のある朝、突然メインPCがピクリともしない状態になり、予定調整その他各所にご迷惑をおかけして申し訳ありません。ようやく新PCのセットアップが8割方完了し、あとは残りソフトを突っ込んで旧PCからデータのサルベージをすればいいところまで来ました。



たいへん無念なのは、この数年ずっとお邪魔させていただいていた、某家の稲刈りお手伝いイベントへの参加記録が途切れたこと。ホストから「来年以降もありますよ」と慰めていただいたのはありがたい限りですが、直前まで先行きが見えなかったことも含め、あれこれ申し訳なく、断腸の思いであります。

現在、東北新幹線で北に向かっており、何の因果かちょうど稲刈りチームと宇都宮あたりですれ違いそうなタイミングですが、週の半ばまでには東京に戻ります。

今週はまったく毛色の異なるふたつのWeb媒体で、それぞれ新連載をスタートさせていただく予定となっております。そちらも何卒よろしくお願い申し上げます。
※写真は去年の稲刈りの模様であります。

2015年8月21日金曜日

『食戟のソーマ』で大森靖子のすごさに触れる不明

『食戟のソーマ』の新ED曲がアレだという話を耳にした。というわけで、早速見てみたら、まあ確かにアニメの作風に合ってるかというと微妙だけど、ED曲『さっちゃんのセクシーカレー』は悪くな……いどころか、だいぶ引っかかってしまった。声が耳に残るし、歌詞がところどころおかしい。というか、曲の世界観自体がおかしい。エンドロールで確認すると「大森靖子」って人の曲らしい。名前で検索したら、ED曲と両A面だという『マジックミラー』の動画が引っかかった。

その曲がすごかった。


https://www.youtube.com/watch?v=0YFG6BCQZFU

やー、びっくりした。なにこれ。歌詞のセンスがめちゃくちゃいい。歌詞の世界観が無自覚で痛い女子そのもののようであり、そういう女子の代弁者のようでもある。自虐、シニカル、エゴイスティック、応援歌……。どの立場から誰に訴えかけてるのか、立ち位置もたゆたっていて超多面的。女子っぽいモノローグ調の歌詞なのに、男の僕が聞いても妙に生々しい。感情的なのに異様にリアルで、かわいらしいのに毒々しい。統一感あるアンビバレンツ。

YouTubeの大森靖子公式チャネルにMVが大量にUPされていたので、片っ端から再生ボタンを押す。そのうち面倒くさくなって、ミックスリストをそのまま再生。そのたびに歌詞の引力にヤラれまくる。だって、初聴でYouTubeで聴いてるのに、「YouTubeさんから私の全部をわかった気になってライブに来ないで」って歌われたらドキッとするじゃん。

ノスタルジックJ-pop』なんて、だめんず女子ワールド全開。「ここは多機能トイレです」「ダサいからスーサイドやめた」「消化器はいらないよね 昨日のお金でパチンコするとこ見てたよ」「笑笑でもいいから帰りたくない」「せんせいあたしパーなんです」。

完全に言葉の世界の住人だ。ここまですごいと、嫉妬すらしない。でも、強い歌詞ばかりが羅列されているわけじゃなく、ふつうの調子の歌詞の合間にキュッと耳に飛び込んでくるからこそ、歌詞の世界や文脈がより印象に残る。

と思いながら、あれこれググっていたら、去年メジャデビューしたときのインタビューでそういうくだりがあった。以下、「ナタリー」から引用。
この「ノスタルジックJ-pop」も(Aメロの)「ちょっと大事すぎて気持ち悪いの」のところとか、まわりくどいしちょっと弱いんです。でも今までは本質的なことと引っ掛け以外は全部消すみたいなとこあったんだけど、今回はだいぶオッケーにしましたね。
余白がないとやっぱ聴けないんですよ、日本人って。 
http://natalie.mu/music/pp/oomoriseiko02/page/3


余白が重要なのが「日本人だから」かどうかはわからないけど、どうも昨年のメジャーデビューを機に少し歌詞の作風が変わったってことらしい。「引っ掛け」というのは、先に挙げたような強い歌詞のほか、『ミッドナイト清純異性交遊』の「春を殺して夢は光っている」というくだりとか、『君と映画』で「私のリモコン握られてる。握ってる見えないヒットラー」といった、印象に残るフレーズで耳を「引っ掛け」に行くあたりを指すんだろう。

もっとも「引っ掛け」以外の「本質的なこと」も、メロディに乗ったら強くなるフレーズ連発。ちなみに先の2本は、MVに橋本愛と蒼波純が出演していて、ショートムービーのような仕立てになっていた。かわいえいじくんの『カゲロウ』(菅野結以嬢が出演)もそうだったけど、いい曲にムービー仕立てのいいMVがつくと、人は(少なくとも僕などは)「いいもの見たなあ」と心に残ってしまう。

大森靖子に話を戻すと、言葉のセンスを置いておいても、音楽性の幅の広さにもいい意味でお口あんぐり。アレンジやメロディの幅がびっくりするくらい広い。ふつうなら、とても一人の作品として成立しないんじゃないかと思うほどいろんなエッセンスが入ってる。だいたい最初に聴いた『マジックミラー』にしても聴くたびに、いろんなアーティストが頭をよぎる。CHARAにトーレ・ヨハンソン、椎名林檎にすかんち……。つかみどころがあるようでない。そして気づけば、大森靖子の曲として脳内でリピートしてしまう。してやられた感満点。

以前、"ミュージシャン芸人"として知られる、マキタスポーツのラジオ番組に彼女がゲスト出演したときもこんなことを言っていたらしい。

『こういうの、あるある』みたいなメロディー作って、自分の歌詞を乗せるみたいな。いまの曲もだいたい、松任谷由実さんと松田聖子さんと中島みゆきさんを足して3で割ろうみたいな感じで作りました。 

「いまの曲」というのは番組中に生演奏をしたという「呪いは水色」という曲の話らしいけど、ユーミンと松田聖子と中島みゆきを足して割ろうという発想がすごい。どんなんだ。でも聞くと、確かにそんなイメージが浮かぶ。他にもどんなアーティストをモチーフとしたか想像がふくらむ曲もけっこうある。

たとえば「絶対絶望絶好調」の岡村靖幸感というか川本真琴感というか。
https://www.youtube.com/watch?v=Q_X4MBaeaik

もしくは「イミテーションガール」のPerfume感とか。
https://www.youtube.com/watch?v=WbKu4Xx0_Us

「表現は自分の中にあるものじゃなくて、通りすぎてく景色を見て、それに自分が引っかかってるだけ」というようなことを前出のナタリーのインタビューでも言っているけど、オマージュ感が前面に出ている。2013年の週刊アスキーにも、「ルールを目的にしない創造的な日本へ」というインタビュー記事が載っていた。彼女自身、椎名林檎のファンであることを隠そうともしてない。

「○○っぽい」としか人の音楽を評価できない人を、全力で馬鹿にしたかった。そんな失笑の気持ちを込めて、私は1stアルバム「魔法が使えないなら死にたい」のジャケットを、椎名○檎さんの2ndアルバム『勝訴ストリップ』のオマージュにしました。もちろん彼女のことをとても尊敬しているし、私自身ファンです。が、誰ひとり同じシンガーなんていないのに、ちょっとエモいだけで彼女の劣化コピーとうたわれ、レーベルにもそういう売り方をされ、もう100人以上のシンガーが10年以上同じことの繰り返しで潰されてきたように私には思えます。
http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/179/179198/

潔くて新しい。や、こういうスタンスのアーティストはいたけど、新人でここまで言い切る人はそういなかった。先人の影響を認めながら、表面だけをなぞるでなく、精神論に走るでもない。『絶対絶望絶好調』のなかでも「エモいのは飽きたんでしょ」という、シーンへの批判とも取れる歌詞があった。それでも、売るための努力は全力でする。プロだ。

あれこれ見ているうちに、彼女が元モーニング娘。の道重さゆみの熱烈なファンだということを知る。ああ、そうか。何かのMVで「うさちゃんピース」やってたし、アイドルイベントに出演している映像もあった。好きな作詞家が、つんく♂と小室哲哉って目のつけどころが#すぎ。音楽のジャンルとレンジの広さに頭がクラクラしそうになる。

正直、ライブの映像を見ると、アイドルチックな振りつけに不思議な気持ちにもなるが、彼女自身がアイドルカルチャーの薫陶を受けているとすれば、そこに根ざした振りつけや、暗闇に揺れるサイリウムなどは、自然なことなのかも。なんでもかんでも「オイ!」って合いの手がかける客席の同調圧力は正直苦手だけれども、一度ライブに行ってみないことにはこのあたりはなんとも。

と、ライブの予定を調べてみたら、当面予定なし。それもそのはず、今年5月に妊娠5か月を発表していた(なのに、6月にライブをやっていた)。8月末にロフトプラスワンのイベントがあるけど、当然のように売り切れている。しょうがないから予習して待つとしよう。

そういえば「きゅるきゅる」のMVなんかは、デビュー当時のJUDY&MARYがまとっていた雰囲気をどことなく彷彿とさせる。そしてやっぱりこの曲の歌詞もいろいろすごいんだけど、とりわけ気に入っているのが……

「わたし性格悪いから あの子の悪口絶対いわない」

いい。すごくいい。

2015年4月27日月曜日

29日(明後日の祝日)、15時から下北沢B&Bでイベントを行う件

そういえばすっかりBlogでの告知がおろそかになっておりましたが、明後日の29日(祝)、下北沢B&Bでコラムニストの石原壮一郎さん&人気レシピサイト「あさこ食堂」のシラサカアサコさんと3人でトークイベントをやります。

お話するテーマとしては「2つ目の"仕事"とのつきあいかた、向き合い方」みたいなものを予定しておりまして、伊勢うどん大使の石原さんと、いまやカリスマレシピサイトの「あさこ食堂」のおふたりがお相手……。ということで、比較的「食」に寄った内容が予想されますが、石原さんの直近の著が『日本人の人生相談』なので、気づくとそちらのほうに話題が持っていかれる危険も穴馬党には見逃せません。

スタートは午後の15時から。終了後、夕方から下北沢のどこかで打ち上げをやると思います。よろしければお運びくださいませ。
http://bookandbeer.com/blog/event/2015042901_bt/